森田童子ラジオインタビュー

昭和56年4月20日(月)に岡山市民文化ホールで『森田童子500人劇場コンサート』が行われました。その前日に,山陽放送(RSK)のラジオ番組『サンデーベスト』に森田童子さんがゲスト出演しました。以下は滝沢アナウンサーと森田童子さんの会話です。テープを元に文字に直したので,読みづらいところがあると思いますが,ご容赦を。

滝沢アナ 「森田童子さんのアルバムの中から『まぶしい夏』と言う曲の詩を朗読させていただきます。よろしいですか?」
森田童子 「はい。どうぞ。」
 詩の朗読 『まぶしい夏』
滝沢アナ 「どんなですか?」
森田童子 「ひとが読むっていうのは大変新鮮ですね。」
滝沢アナ 「そうですか。」
森田童子 「私はあまりひとには読んでいただいたことはないんですけれども,大変新鮮に聴かせていただきました。」
滝沢アナ 「いやー冷めていらっしゃるので,森田さん。でね,森田さんの世界って言ったら何の世界に属するのかしらって,今の曲の間に話をしていたんだけど?何かしら?」
森田童子 「何でしょうね。あまりジャンルって自分の中でもほとんど意識してないですけどね。」
滝沢アナ 「でも,フォークじゃないわね。何かしら?そんな感じでありますが。森田童子さんというとね,どちらかと言うとメジャーと言うよりも,ご自身を前にして失礼かもしれないけど,やっぱりマイナーというニュアンスがあって,それだけファンの方も深くじわじわ浸透している。でも,あ,この曲だったら知ってる方も多いんじゃないかしら。まず一曲聴いていただきましょう。森田童子さんで『さよならぼくの友だち』」
 曲 『さよならぼくの友だち』
アシスタント 「森田童子さんで『さよならぼくの友だち』でした。」
滝沢アナ 「はい,森田童子さんには僕のすぐ脇に座っていただいているんですが,曲の間中に身体検査をさせていただきましたが,今日は,わりと高めの,それも前も後ろも高めの革のブーツでコールテンのスラックスに,それはグリーンのアノラックですか?」
森田童子 「ビニールのジャンパーですね。」
滝沢アナ 「(困りながら)早く言えばそうなんですね。で,「暑くないですか?」って言う質問したら,とても寒がりなんですって?」
森田童子 「そうですね。7月くらいまでダウンパーカー仕舞えないんですね。」
滝沢アナ 「はー。」
森田童子 「わりと梅雨明けくらいに,東京はたまに寒い日があるんですけど,厚めのダウンパーカーというか,コートを外出するときは着ますね。」
滝沢アナ 「はー。寒がりだと言うことで,東北の方のご出身? あっ,東北の方の人は寒さには強いんですね。」
森田童子 「そうでしょうね。」
滝沢アナ 「で,お伺いしたら,東京の中野のお生まれと言うことで。」
森田童子 「はい」
滝沢アナ 「「犬と猫とどっちがお好きですか?」と言う質問をぶり返してもいいですか?」
森田童子 「はい。今まで飼っていたのは犬ですね。ですけど,ここへ来て2年くらい前に病気の猫が迷い込みまして,それを治したりなどして,病気が一段落して5匹生まれたんですね,子供が。一時,去年の夏くらいは家に6匹いたんで,好き嫌いに関係なく面倒をみるようになったんですね。」
滝沢アナ 「とりあえず猫の相手して,飯食わさにゃあいけんし。今は猫はどうしてるんですか?」
森田童子 「今は親子でひっそりと生活しています。」
滝沢アナ 「みんな,成長して?」
森田童子 「みんな成長して,4匹は貰ってもらいました。あと,親と息子さんですか。1匹いますけど。」
滝沢アナ 「なるほどね。この話は1曲目を聴いている間にしてたんですけど。あと,意外なことに「カブト虫を飼ってるんです。」とおっしゃるんですが。」
森田童子 「そうです。カブト虫は結構長いですよ。7年くらいになります。」
滝沢アナ 「カブト虫は1シーズンじゃないんですか?」
森田童子 「1シーズンですけども,卵を産みますから,それをどんどんかえしていくかたちですね。」
滝沢アナ 「でも,1回に猫は5,6匹だろうけど,カブト虫は何十匹…」
森田童子 「30前後,1匹から産まれるんじゃないですか。でも,産まれますけど育つのは何匹もいませんね。自然消滅しちゃうのもかなりいますし。」
滝沢アナ 「共食いなんかあるんですか?」
森田童子 「オス2匹にメス1匹になると弱いオスはやられてしまいますね。」
滝沢アナ 「でも,7年にもなるというのはどんなきっかけで飼われるようになったんですか?」
森田童子 「あまりきっかけって言うのもなく,なんとなく幼虫を買ったんです。3月くらいに。」
滝沢アナ 「デパートで?」
森田童子 「いえ,近くにとっても親しくしている昆虫とか金魚とか売ってる店があるもんで。そこで買ったのがきっかけで。1年間ですね。卵から成虫まで1年間。」
滝沢アナ 「じゃあ,ツアーから帰ったらすぐにカブト虫の世話ですか?」
森田童子 「幼虫の間は静かですから,土の中ですから,腐葉土をまめに換えるかたちですよね。結局,8月に卵が産まれて3齢幼虫までになるんです。人間の親指くらいの大きさになるんです。それからさなぎになって成虫になってくかたちですね。さなぎから成虫までが20日間なんです。だから今は結構大きな幼虫になってますね。」
滝沢アナ 「で,今,売れますよ。」
森田童子 「高いみたいですね。」
滝沢アナ 「ビックリするくらい高いですね。僕はインコを飼ってるんですけど,インコは喋りますよね。ビービー言いながら,最近,自分の名前を覚えたんですけど,カブト虫は何も喋らないし,鳴くんですか?鳴くっての聞いたことないですけど。」
森田童子 「鳴くんですね。私はそれまで全然知らなかったんですけども,大きな音ではないですけど,静かにしてますとお尻の所と羽の間くらいで,お尻をヒュッ,ヒュッと動かして,キュッ,キュッ,キュッと言うような音ですね。メスもオスもやりますね。それで,何匹ものカブト虫を見ていて,そろそろ死ぬ時期だなって分かるんですよね。親の止まり木っていうのがあるんです。成虫のやすらぎの場なんですけれども,その止まり木から,いつもならしがみついていられるものが,ポトンとしがみつく力もなく落ちちゃってるのね。そうすると,今日の夕方くらい危ないなって分かるんですよね。そうすると手のひらなんかにのせても,すぐ仰向けになってしまうって言うか。それでも最後までキュッ,キュッって鳴いたりしているのもいますし,色々ですね。終わり方も。」
滝沢アナ 「どうなんでしょうね。飼い主の愛情なんかも伝わったりするのかな?」
森田童子 「どうなんですかね。そのへんはよく分からないけども,カブト虫の性格が私の性格と合うみたいなんですけどね。」
滝沢アナ 「どんなものを食べさすんですか?」
森田童子 「色々です。蜜も飲みますけど,たまにはヤクルトとか。」
滝沢アナ 「ヤクルトを飲むんですか?」
森田童子 「あと,腐れかけた果物とか。なるべくなら新鮮なものの方がいいんでしょうけど。やはり,あまり甘いものがいいってこともないらしいんですね。昔,私は砂糖水って教わっていたんだけども,それだけではなくてキュウリとかナスとかも必要なんだって聞きましたけれども。」
滝沢アナ 「森田さんのお部屋にはいるとカブト虫独特のにおいが…?」
森田童子 「臭いですね。」
滝沢アナ 「浸みてる?」
森田童子 「浸みてはいませんけど,かなり臭ってます。」
滝沢アナ 「今,都会では全くカブト虫は見ることがないですけど,都会で見ることがない生き物と言ったらホタルなんか,そうだよね。玉川上水には上水ボタルって言われて。僕は吉祥寺に住んでたんだけども,僕の記憶にはないんだけど「小さい頃は竹ぼうきを持って,笹の葉を折ってホタル狩りに連れて行ったのよ。たーちゃん覚えてないの?」って叔母なんかに言われるんだけど。先ほど,僕が朗読させていただきましたが,今度は,玉川上水沿いに歩くと,君の小さなアパートがあった。『まぶしい夏』を聴いて下さい。」
 曲 『まぶしい夏』
滝沢アナ 「今日は森田童子さんをお客様にお迎えしています。カブト虫の話を聞いてキュッ,キュッという音を聞いてみたいな。僕は観葉植物を育てているので,腐葉土とか霧吹きで水をあげたりとかしなきゃいけないとか,曲を聴かずにお話ばっかりしていましたが,ごめんなさい。失礼しました。さあ,500人コンサートと言うんですか,500人劇場,これはいつから始まったんですか?」
森田童子 「3月10日です。」
滝沢アナ 「これは,あまり大きなホールではなしに,ちょうど500人くらいのところで,と言うことですか?」
森田童子 「はい。中ホールでということで。ホントは東京でテントでやったので,受け入れ先があればテントで回りたかったんですが…。」
滝沢アナ 「東京は池袋の三越デパートの裏に広場があって,そこでテントを立てて,パッとやるのってのは許可を取ったり,色々難しいんでしょ。」
森田童子 「かなり難しいですね。結局,公有地との交渉も2ヶ月くらいしたんですけど,借りること出来なくて,三越の私有地と言いますか,そこになってしまったんですね。」
滝沢アナ 「じゃあ,場所さえ許せば,ホントは黒テントを持ってどこへでもパッと小屋立ててやっちゃいたいと。」
森田童子 「そうですね。やはりテント立てるにも20〜30人いるんですよね。今回も黒色テントの劇団員の人が手伝ってくれまして立てたんですけど,時間的にはそうでもないんですけど,大人数が移動するとなると費用も大変だし,なかなかなんですね。」
滝沢アナ 「はー。ちなみに,東京の黒色テントを立てたときは何人くらいのお客さんがお見えになったんですか?」
森田童子 「5日間やって,だいたい500人平均ですね。」
滝沢アナ 「5日で2500人のファンの方が。どちらかと言うと東京,東北の方で根強い人気があるんですか?」
森田童子 「あのー。わりとねー。どう言ったらいいんでしょうか。東北もですけども,沖縄もまめに行くんですよね。沖縄は年に2回とか。それから沖縄の離島がありますよね。石垣島とか,宮古島とか。ああ言うところが,とてもなんか,こー,好きというか,まめに行ってるんですよね。」
滝沢アナ 「いただいた資料を読ませていただきましたら,どんな方でもいいんだ。来てくれないかと声がかかったら,すっと色んな所に行かれちゃう。」
森田童子 「あまり,なんか,こう,イベンターさんって言うのは少ないみたいですね。沖縄の石垣島の時も高校の国語の先生が呼んで下さったり。湯田村って言う岩手の村なんですが,そこの青年劇団員の人が呼んでくれたり。なんでもない北海道の方では肉屋の配達をしている人が200人くらいの会場を押さえられるって言うんで,そう言うところにも行きました。」
滝沢アナ 「でも,レコード出していて,プロの歌手でいらっしゃるから,レコード会社の方としては,「なんとか売れる曲を書いて,もっとお客さんも動員して,そろそろデビューして何年かなるんだから。」何年になるんですか?」
森田童子 「6年です。」
滝沢アナ 「「6年にもなるんだから,そろそろ森田君,元取らせてくれよ」って言いませんか?」
森田童子 「諦めてるんじゃないですか。もう。ビジネスとビジネスの間に入っているような感じで,あまりもう,強く言わなくなったっていうか。」
滝沢アナ 「その一方で,口コミって言うのかな。「森田童子いいよ。」「じゃ,レコード貸して。」みたいな感じで深く静かに浸透していってるのかもしれない。また,そのあたりが黒色テントの劇場,500人コンサートにファンの方が集まって来るんじゃないかと思いますけれども。今日は新しいアルバムを持ってきていただきました。これは「2年の沈黙を破るLP」とありますけども,前は頻繁に?」
森田童子 「1年に1枚ずつですね。LPは。」
滝沢アナ 「じゃあ,それが1年ブランクがあると2年の沈黙になってしまう?」
森田童子 「2年間出さなかったんです。だから,その前にカテドラルライブだったもんですから,オリジナルとしては3年ぶりになるんです。」
滝沢アナ 「前作の森田童子とラストワルツにいる森田童子とは何か変わってますか?」
森田童子 「あのー,わりと1枚目に戻ったかな,と言う感じは自分では持っているんですけどもね。わりと聴いてくれた人もそういうこと言われること,多いですね。」
滝沢アナ 「1枚目,グッドバイの世界ですね。じゃあ,あなたはどのように聴きますでしょうか?新しいアルバムから何曲か紹介しましょう。まずは『赤いダウンパーカーぼくのともだち』」
 曲 『赤いダウンパーカーぼくのともだち』
滝沢アナ 「今,『赤いダウンパーカーぼくのともだち』がかかっている間は,初めて曲のお話をしていましたね。「これはどうなんですか?」「設定は実話なんですか?」と言ったら,森田さんは「いや,そうじゃない。むしろ自分をなるべく隠そうと言うか,見せたくないわ,と言う感じがあるのよ」と言うことをおっしゃったんだけども,やっぱりそんなもんかな?」
森田童子 「そうですね。うーん。何て言うのかな。疑似体験の中に自分の思い入れをいかに挿入するかという作業だと思うんですね。だから,「あっ,こうじゃなかったな。」という部分で,「こうあって欲しかった」と言うような願望というか,祈りみたいな部分が大変強いと思います。」
滝沢アナ 「曲の間の話の中で,「なんで,私,こんなにおびえているのか?」って思うことがあるって,ふっとおっしゃったわね。」
森田童子 「そうですね。なんだか分からないけど,すごく隠したがる性格って言うか。隠したがるって事ではないんですが,なんかこう,いろんなカモフラージュを作っておきたいということは,いつもなんかあるみたいで。何て言うのかな。今まで人と会うとかね,こんなに疲れることっていうふうに思ってなかったんですけども。なんでこう,おびえて疲れてるのかなと最近,実感としてあるんですよね。2年くらい仕事してなかったせいもあるのかもしれませんけど。」
滝沢アナ 「また,歌というのはおかしなもので,そんな心理状態がね,自分を出したくないつもりでも,自分を代弁してくれていると言うところがあったりして。」
森田童子 「そうですね。」
滝沢アナ 「リスナーの方には見抜かれていると。森田童子の裸が見られているというか。そんな部分があるかもしれません。さあ,新しいこのアルバムの中で僕は全部聴いて,A面の1番最後の『グリーン大佐答えて下さい』って歌があるんだけど,最後はショッキングな音作りで,ドキッとビックリしたんだけど。それとは別に余韻としていいなと思った曲でアルバムタイトルにもなっている『ラスト・ワルツ』という曲を聴いていただくんですが。これは最後にですね,実はリフレインが,どういうんですか,ラジオから流れている音を?」
森田童子 「音のね。ずいぶん昔のシャンソンのレコードって言うのは,リスゴーティーとか,あのへんの歌なんですけど,結局,雑音が入ってて,SP盤で。」
滝沢アナ 「SP盤。ジャージャー,チリチリ…」
森田童子 「そう。もう廃盤になってしまったレコードのような音を作りたいってのがありまして。ラジオと言うより,ボール紙に針を落としましてね。まず雑音を録ってそれから歌にダブらすという作業だったんです。」
滝沢アナ 「しかし,その部分が,音が悪いんですけれども,なんとも余韻というか,あとに残るというか,とっても素敵な曲です。アルバムタイトル曲で『ラスト・ワルツ』」
 曲 『ラスト・ワルツ』
滝沢アナ 「1番最後にアルバムタイトル曲の『ラスト・ワルツ』を聴いていただきました。ホントだったら,今頃は「サンデーベスト」のイメージソングがかかって,僕たちはとっくに「おやすみなさい」を言っちゃってラジオのマイクの前から消えちゃってるはずなんだけど,あっという間に時間が来ちゃいました。森田童子さんのファンの方はもちろんご存じでしょうし,そうでなくて,今リスナーの方で「あっ,素敵な世界を持っていらっしゃる方だな」,あるいは「私と同じ部分,何か共感できるものがあるな」と思った方。実はもう今日になりましたけれども,岡山市民文化ホールでコンサートがあります。6時半から?」
森田童子 「そうですね」
滝沢アナ 「岡山市民文化ホールで森田童子さんのコンサートがあります。テントを張るってわけにはいきませんけれども,森田童子さんの世界に入ってみてはいかがでしょうか。今晩はワーナーパイオニアレコードの森田童子さんでした。時間いっぱいです。おやすみなさい。」
森田童子 「おやすみなさい。」

最初は滝沢アナウンサーはかなり森田童子さんに気を使って,緊張気味でした。でも,穏やかな明るい雰囲気で最初から最後まで時間が流れてゆきました。森田童子さんが出演された時間は4月20日の0:30〜1:00くらいではなかったかと思います。最後は滝沢アナウンサーが話をしているときに時報が入ってますので,ホントに時間いっぱいと言おうか,実際には少し時間オーバーしていたのではないかと思います。